老後を頼める人がいない
ご高齢者の中には、さまざまな理由でおひとりになっていて、
「自分は今後どうなるのか」
と老後に不安を抱いている方がいらっしゃいます。
今回はそうした不安を少しでも取り除き、安心した老後を過ごすための法制度や契約を説明していきます。
対象となる方
- 独身者
- 夫(妻)に先立たれてひとりである
- 子どもがいない
- 子どもはいるが疎遠である
- 親族に迷惑をかけたくない など
主な心配ごと
- 病気になったとき
- 介護が必要になったとき
- 自分の葬儀、納骨
- 財産はどうなるのか など
があげられます。
しかし心配することは人それぞれ違いますので、どの制度を利用するにしても何度も面談を重ね、ご本人の意志を確認していく作業が必要になります。
実際にどのような制度や契約があるのか
大きく5つあり、この中から自分に必要だと思うものを利用したり契約したりします。
① 見守り契約(みまもり)
② 財産管理委任契約(ざいさんかんり)
③ 成年後見制度(せいねんこうけん)
④ 死後事務委任契約(しごじむいにん)
⑤ 遺言(いごん)
なんだか難しそうに見えますが、どれもご本人の生活に身近な制度のことなので、わかりやすく説明していきたいと思います。
見守り契約(みまもり)
これは、ご本人が元気なうちにする契約です。
定期的に電話や訪問をし、ご本人の健康状態や環境に変化がないかを見守ります。
とくに、認知症は、目で見てすぐ分かる病気ではありません。ふだんからご本人を知っている方が「あれ、○○さん、おかしいな?」と初めて気づくことができます。
たとえば、
- 何日も洗濯物が干されたまま
- 何日もゴミ出しされていない
- 怪我をしている
- 以前より身体が不自由になっている
- 意思の疎通がむずかしい
- 郵便物がたまっている など
認知症に気付くときは、こんな些細な日常的の変化がおこります。
ときどき「加齢による物忘れ」をご心配になられる方がいますが、歳をとれば誰でも多少忘れぽくなるものではこちらは認知症とはちがいます。
見守りの頻度はどのくらい?
見守りの回数や方法は、自由に決めることができます。
ご本人の健康状態や環境に変化がないかを確認することが目的ですから、
月に1回の電話連絡、3か月に1回の訪問
をお勧めしています。
この見守り契約は、あとで説明する任意後見とセットで利用する場合が多く、任意後見がスタートする(=意思能力が不十分になる)時期を判断するために大切な契約となります。
つぎに、判断能力はしっかりしているが、病気やケガで身体が不自由になった場合を見ていきましょう。
財産管理委任契約(ざいさんかんりいにん)
財産管理委任契約とは、意思能力は十分にある(認知症等ではない)が、病気やケガなどによって身体が不自由になった時に、本人に代わって財産の管理などを行う契約です。
例えば、ご本人が70歳のときは足腰も丈夫で銀行へ行くこともできます。
しかし、90歳になったらどうでしょうか。
歩くことが困難になってきます。
そんな時に、
日常生活を送るために必要な財産管理等
を本人に代わって行うのが財産管理委任契約です。
主なできること
- 銀行から預金を下ろしてほしい
- 家賃や光熱費の支払いをしてほしい
- 役所の手続きをしてほしい
- 入院代の支払いをしてほしい
- 介護サービスの契約をしてほしい など
人それぞれにやってほしいことは違いますので、
契約の内容や開始する時期などは双方の話し合いで自由に決めることができます。
成年後見制度との違い
「成年後見制度ではダメですか」とご質問をいただくことがあります。
成年後見制度は 判断能力が低下した人のための制度 となります。
そのため、高齢で身体が動けなくなっても、
ご本人に判断能力がある場合には成年後見制度の利用はできないのです。
成年後見制度(せいねんこうけん)
成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が不十分になった場合に、
成年後見人がご本人の生活面や法律面を支えていく制度です。
成年後見人ができること
- 預貯金の管理
- 日常生活に必要な支払い(家賃、公共料金など)
- 税金の支払い
- 介護サービスの手続き
- 病院代の支払い
- 施設へ入るための契約を結ぶ など
成年後見人ができないこと
後見人は「本人の介護する」などの事実行為はできません。
たとえば、本人に介護が必要になったとします。
その際は、成年後見人が介護をするのではなく、
介護ヘルパーと契約を締結し、本人が必要なサービスを受けられるようにすることが後見人の仕事となります。
また、「結婚・離婚する」「養子縁組」するなどの身分行為もできません。
成年後見には2つの制度がある
法定後見
十分な判断能力がない方が利用できます。家庭裁判所が選任した後見人が、ご本人に代わり財産や権利を守り、支援していきます。
任意後見
十分な判断能力がある方が利用できます。大きな違いは自分で後見人を選ぶことができます。ご本人の希望をもとに、やってほしいことなどを決めていきます。もし、認知症などで判断能力がなくなった場合でも、健康だった頃のご本人を知っていますので、希望をくみ取った支援をしてくれます。
成年後見人の権利は、本人が亡くなられた時点で消滅します。
そのため、葬儀や納骨など、亡くなられた後のことは、つぎの死後事務委任契約を結ぶことにより依頼することができます。
死後事務委任契約(しごじむいにん)
ご本人が亡くなられた後をサポートするための契約です。
主なできること
- 葬儀や納骨
- 親族や親しい友人へのご連絡
- 未払い代金の精算(医療費、公共料金、施設の費用など)
- 部屋の片付け、家財の処分 など
本人が亡くなられた後の財産については、遺言によって対応します。
遺言(いごん)
遺言に従い、財産を引き渡します。
あなたの財産を、誰に、いくら、あげたいのかを生前に決めておきます。
例えば、
甥に全財産
でもいいですし、
寄付したい先があれば、
△△野鳥の会 60%
◯◯教会 40%
でもいいです。本人の希望した内容を公正証書にします。
遺言書がない場合には、相続人全員による遺産分割協議に基づき、分配されます。
料金について
料金は、
・初期費用(最初だけかかる費用)
・毎月かかる費用
があります。
初期費用
契約書を作成する費用となります。
ご本人が希望する内容、どこまで対応してほしいのかなどを契約書として残します。
見守り契約 | 50,000〜 |
財産管理契約 | 50,000〜 |
成年後見制度(任意後見) | 100,000〜 |
死後事務委任契約 | 60,000〜 |
遺言 |
90,000〜 (証人2人込み) |
※ 公証人手数料などの実費が別途かかります
毎月かかる費用等
毎月かかる費用 | 備考 | |
見守り契約 | 5,000〜 | |
財産管理委任契約 | 30,000〜 | |
任意後見制度 |
30,000〜 |
別途、後見監督人の報酬がかかります。報酬額は裁判所が決定します。月額5,000~20,000円程度と決定されることが多いです。 |
死後事務委任契約 | なし |
(亡くなった後)死後事務委任の執行300,000円〜 |
遺言 | なし | (亡くなった後)遺言の執行300,000円〜 |
※ 預託金については応相談とします
まとめ
自分の老後について、元気なうちに考えておくことは大きな安心につながると思います。
これらの制度については、司法書士、行政書士、弁護士等、さまざまな士業が対応しています。
ご自分の老後を任せる人なので、
- 丁寧に話をきいてくれる
- 説明がわかりやすい
- 制度や契約について熟知している(経験が豊富)
- 自分から質問しやすい
- 人柄が良い/責任感がある
などは受任者を選ぶ際の大切なポイントになります。
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