日本では、ほとんどの夫婦が「協議離婚」という方法で離婚しており、全体の87.2%になります。
協議離婚とは、法律上の許可を必要とせず、夫妻が話し合いによって離婚する方法です。役所へ離婚届を提出すれば離婚が成立し、費用もかかりません。夫婦が離婚に合意しているのであれば、最も望ましい方法といえます。
ここでは、離婚についての基本的なことをご説明します。
離婚について基本的なこと
離婚には、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類があります。
出典:「政府統計の総合窓口(e-Stat)」,離婚の種類別にみた年次別離婚件数及び百分率 2017年
協議離婚 | 夫婦の話し合いで、合意して離婚 |
調停離婚 | 夫婦の話し合いがつかない場合、家庭裁判所で調停によって離婚 |
審判離婚 | 調停が成立しない場合、裁判所が調停に代わる審判を下すことによって離婚 |
裁判離婚 | 裁判による離婚 |
気をつけるポイント
離婚する前に、条件(親権、養育費、財産分与など)を話し合いましょう。離婚後では、話し合う時間が取りづらくなったり、それぞれの生活がスタートしており、環境も変わっているため、相手から提案される条件がシビアになってくるなど、なかなか協議が進まない恐れがでてきます。
そして、合意した内容は、必ず、離婚協議書を作成しましょう。できれば、公正証書にしておきましょう。
離婚協議書とは
離婚協議書とは、夫婦の話し合いで合意した内容を記しておく書面のことです。役所へ離婚届を提出すれば離婚はできますが、離婚条件を書面にしておかないと、あとで「言った」「言わない」のトラブルになることがよくあります。
夫婦で合意した内容を書面に残しておくことは重要です。
公正証書にする必要があるのか?
公正証書とは、公証役場で作成する公文書のことです。
離婚協議書を公正証書にする主なメリットは3つあります。
① 高い証明力がある
公正証書は、公証人が、離婚する夫婦に、ふたりが合意した内容や意志をしっかりと確認します。そのため、信用度が高く、裁判で争われても有力な証拠として扱われます。
離婚協議書では、夫婦ふたりだけで作った書面なので、相手が「そういう意志で作っていない」「偽造だ」など、証拠力が問題となることがあります。
② 強制執行ができる
養育費のような子供が成人するまで支払うお金などは、離婚してから年数が経つと、滞納したり、支払われなくなることもあります。
公正証書の最大のメリットは、相手が約束を守らなかった場合、裁判しなくとも、相手の給与や預貯金などの財産を強制的に差し押さえる手続きができるということです。
③ 紛失の心配がない
もし、公正証書を紛失してしまった場合、公証役場に原本が20年間保管されているので再発行ができます。保管料もかかりません。
離婚の話し合いで決めること
親権
親権とは、子どもを引き取って一緒に暮らしたり、学校へ通わせたり、財産を管理したりすることをいいます。権利だけでなく、義務も伴いますので、子供が病気になれば、看病したりする義務もあります。未成年の子どもがいる場合、父母のいずれかを親権者として決める必要があります。
養育費
養育費とは、子どもを育てる上で必要な費用で、生活費、教育費、医療費などです。
基本的に、夫婦が話し合いをして内容を決めていきます。どうしても話がまとまらない場合には、家庭裁判所へ調停等の申立をします。
養育費の金額の決め方
養育費の金額の一般的な決め方は、まず、家庭裁判所で利用されている算定表からおおよその金額を算出します。それを基準に、夫婦の話し合いで、最終的な金額を決めていきます。
実際に、算定表で計算する際には、つぎの4つの項目が必要です。
算定表で必要なもの
- 子どもの人数
- 子どもの年齢
- 夫婦の年収
- 夫婦の職業が会社員か、自営業か
例)夫 年収400万円 会社員、妻 100万円 パート、子ども1人(3歳)の場合
実際に、算定表を利用して、養育費の相場を算出してみましょう。
下図のように、養育費の相場は「4〜6万円」となります。
支払い期間
養育費の支払い期間は、子どもが成人するまでとされており、20歳になるまでというのが一般的です。ただし、夫婦の話し合いで決めることなので、子どもが「高校を卒業して就職する18歳まで」「大学を卒業する22歳まで」というケースもあります。
養育費を支払う義務についてですが、離婚によって離れて暮らすことになった親も、子どもの親であることに変わりありません。そのため、親権がなくとも養育費を支払うことは当然の義務となります。
また、離婚した直後は支払われていた養育費も、だんだんと、遅延、滞納するケースが多いため、必ず、公正証書にて離婚協議書を作成しましょう。実際に支払ってもらえない場合に、速やかに強制執行の手続を利用することができます。
財産分与
財産分与とは、「夫婦が結婚している間に、協力して築いた財産を離婚にともなって分けること」を一般的にはいいます。財産分与の割合は、「2分の1ずつ」が原則です。
たとえ、専業主婦で収入が0であったとしても、家事をすることにより夫の財産の形成に貢献したと言えます。そのため、夫婦で半分ずつ、平等に共有財産を分ける「2分の1ルール」が実務では一般的です。
財産分与の対象になるもの
- 預貯金
- 自宅などの不動産
- 自動車
- 有価証券
- 生命保険(解約返戻金のある) など
自分名義の預金通帳などは、「離婚した後は自分のもの」と思ってしまいがちですが、これらは「共有財産」といい、財産分与の対象となります。財産分与の対象になるものに、名義は関係ありません。
財産分与の対象にならないもの
- 結婚前に築いた預貯金
- 婚姻中に相続により取得した財産 など
これらは「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。
財産分与の対象に不動産があるとき
離婚するときに、相手名義の不動産(一戸建てやマンション)がある場合、名義変更の登記が必要になります。
不動産の名義変更をするには、不動産をあげる人(登記義務者)と不動産をもらう人(登記権利者)が共同で申請しなければなりません。そのため、離婚したあとに行おうとすると、相手と連絡が取れなくなったり、登記の協力に応じてくれないことがあります。
後日のトラブルを避けるためにも、離婚届の提出と並行して、登記申請することが重要なポイントです。
所有権移転登記
例えば、夫の単独名義になっている自宅を、妻が引き継ぐことになった場合、
不動産をあげる夫(登記義務者)から不動産をもらう妻(登記権利者)へ「所有権移転登記」が必要になります。
持分移転登記
夫婦でペアローンを組んでいたなど、不動産が共有名義になっている場合、
不動産をあげる夫(登記義務者)の持ち分を、不動産をもらう妻(登記権利者)へ移転する「持分移転登記」が必要になります。
年金分割
年金分割とは、離婚するときに「婚姻中に払った年金保険料」の記録を夫婦で公平に分け合う制度です。
年金分割をすると、分割をした方は将来の年金額が減り、分割を受けた方は将来もらえる年金額が増えます。
原則、離婚後2年以内に手続きする必要があります。
対象となる年金は?
年金は大きく3階だてになっており、分割の対象となるのは厚生年金(旧共済年金も含む)のみです。いわゆる2階部分です。
たとえば、夫が自営業で国民年金に加入していた場合などは、年金分割の対象となる年金はありません。
※1 平成27年10月1日以降の分(新設)
※2 平成29年9月30日までの分
年金分割制度を利用できる人
- 第3号被保険者
- 第2号被保険者(婚姻中、共働きをしていた方)
年金分割制度の種類
年金分割の方法は、「合意分割」と「3号分割」の2つがあります。
合意分割 | 3号分割 | |
実施開始時期 | 平成19年4月より実施 | 平成20年4月より実施 |
分割の割合 | 0.5の範囲 | 0.5 |
夫婦の合意 | 必要 (夫婦の合意 または 家裁の審判など) |
不要 |
対象者 | 夫婦のどちらか | 第3号被保険者 |
分割の対象期間 | 厚生年金に加入しているすべての婚姻期間 | 平成20年4月以降の第3号被保険者期間 |
合意分割
離婚する当事者双方の請求により、年金を分割する方法です。
分割の割合は、ふたりで話し合った割合 または 裁判手続によって決まった割合で、どちらも最大2分の1となります。
3号分割
3号分割とは、専業主婦の方など、第3号被保険者であった方からの請求により、他方配偶者(第2号被保険者)の「婚姻中に払った年金保険料」の実績を2分の1ずつに分割する制度です。請求にあたっては、当事者双方の合意は必要ありません。
この制度は、平成20年4月以降の保険料納付実績に適用されます。それ以前については、合意分割によることになります。
料金について
当事務所へご依頼いただいた場合にかかる料金は下記の通りとなります。
- 報酬
- 公証人手数料
- 不動産の名義変更 ※不動産がある方のみ
報酬
離婚協議書(公正証書)作成 | 66,000円~ |
※実費等が別途かかります
公証人手数料
離婚協議書を公正証書にする場合には、専門家の報酬とは別に、公証役場へ法定の手数料を納める必要があります。
この手数料は、ご自身で手続きしても同じくかかります。
目的の価額 | 公証人手数料 |
100万円まで | 5,000円 |
200万円まで | 7,000円 |
500万円まで | 11,000円 |
1000万円まで | 17,000円 |
3000万円まで | 23,000円 |
5000万円まで | 29,000円 |
1億円まで | 43,000円 |
離婚公正証書の場合、
- 財産分与と慰謝料は合算し、養育費は分けて計算します
- 養育費の支払い期間が10年以上の場合は、10年で計算します
- 年金分割は、別途11,000円かかります
具体的な計算例を記載しますのでご参考ください
例1)子ども2人に一人あたり4万円を10年間以上支払う
養育費 40,000円×2人×12カ月×10年=960万円→手数料17,000円
例2)子ども2人に一人あたり4万円を10年間以上支払う、財産分与として300万円を支払う
養育費 40,000円×2人×12カ月×10年=960万円 →手数料17,000円
財産分与 300万円 →手数料11,000円
17,000+11,000 = 手数料28,000円
※ この他に送達手数料などが数千円かかります
不動産の名義変更
分与する財産の中に不動産がある場合のみ、かかる費用となります。
費用は、報酬と登録免許税がかかります。
不動産の名義変更についての報酬
所有権移転登記 | 55,000~ |
持分移転登記 | 55,000~ |
※実費等が別途かかります
登録免許税
登録免許税とは、登記をする際に納める税金のことで、ご自身で手続きした場合も同じくかかります。
離婚による財産分与は、固定資産税評価額×2%となります。
具体的な計算例を記載しますのでご参考ください
例)固定資産評価額1000万円のマンションを夫から妻へ名義変更する場合
報酬 55,000円
登録免許税 1000万円×2%=200,000円
55,000+200,000 = 255,000円
※ 登録免許税はご自身で手続きした場合も同じくかかります
※ その他、郵送代などの実費が数千円程度かかります
専門家を選ぶときのポイント
専門家を選ぶとき、離婚問題に精通していることは必須ですが、意外に大切なのは「相性」です。
相談者ひとりひとり事情も違いますし、おかれている立場も異なります。そのため、話を親身になって聞いてくれ、相談者からも質問がしやすい専門家を選ぶことをお勧めします。
法律相談は、専門用語も多いので、わかやすく噛み砕いて説明してくれることも重要です。
行政書士
夫婦が離婚に合意している場合、離婚協議書などの書類作成を依頼することができます。紛争案件を扱うことはできません。
司法書士
夫婦が離婚に合意しており、分割する財産に不動産がある場合は、司法書士をお勧めします。上記、離婚協議書などの書類作成に加え、名義変更などの不動産登記を依頼することができます。登記業務は、司法書士の専門分野となります。法的知識も豊富で、民法にも精通しています。
弁護士
夫婦が離婚について争っている場合は、弁護士をお勧めします。離婚訴訟などにおいて代理人となれるのは弁護士だけです。離婚に関するすべての問題を扱えるプロフェッショナルです。しかし、実際に裁判までして離婚する夫婦は全体の2.6%(※1)なので、一般的なご夫婦では弁護士への相談は不要なことが多いようです。
※1「政府統計の総合窓口(e-Stat)」,離婚の種類別にみた年次別離婚件数及び百分率 2017年
まとめ
離婚を考えている人の多くは、「修復に向かって努力したけれど、離婚という結果になってしまった。」という方がほとんどではないでしょうか。そのような中、初対面の人に離婚の相談をすることは大変な勇気と、労力がいると思います。
しかしながら、離婚時に夫婦で話し合うことは重要な案件が多く、漏れがあったり、合意した内容を書面に残しても法的効力がなかったなどということがないように専門家へ相談することは大切なことです。
このページでは一般的なことをわかりやすく解説しましたが、夫婦の状況、子どもの有無、財産の種類などにより、協議内容も多岐にわたります。
初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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